免震,制震,構造設計,耐震診断,伝統木構法
一級建築士事務所(株)構造計画,摺木勉
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住まいこそ、安心安全の免震構法で

■住まいこそ免震構法で
■免震構法のしくみ
■建物の揺れを止める装置
■「絶縁と連結」を共に解決する
■免震装置の最適設計
■免震構法を多くの人々に
免震住宅のイメージ


■住まいこそ免震構法で
先の新潟地震で小千谷市に設置された地震計には、地表面が1秒間に136cmの速さで振動を繰り返したことが記録されており、この時の地震の強さは震度7とされました。
この地震計から約1kmのところにあった総合病院老人保健施設「水仙の家」では、3棟のうち5階建免震構造の建物はなに一つ壊れず、3階の入所者が棚に安置した仏像は転倒もしなかったことが話題になりました。
他の1棟(3階建)は被害が大きくて建替えとなり、近年に建てられた1棟(7階建)も損傷は少なかったものの設備等が被災した為、この2棟の入院患者は免震棟にベッドを移して避難生活を余儀なくされました。
震災の死傷者の大部分は、家具の転倒や住宅の損壊によるとされています。住まいこそ免震構法でつくり、安心、安全の.くらしを確保しましょう。

■免震構法のしくみ
簡潔に言えば、地盤と建物を絶縁して地盤の揺れを建物に伝えないようにする仕組みです。しかし、重量の大きな建物と地盤の絶縁は容易ではありません。
そこで、建物と基礎の間にスライド装置を挟んで地盤の横ゆれを伝わりにくくする方法が採られており、現在の住宅免震では次のような方法が主となっています。
1.すべり免震

滑りやすい金属板を基礎と建物の両側に取り付けてスライドさせる
2.転がり免震

ボールベアリングを基礎と建物の間に挟んでスライドさせる
3.球面滑り免震

球面状のすべり板とすべり球を組み合せた装置を基礎と建物の間に挟む

■建物の揺れを止める装置
大地震の時は新潟小千谷市のように地盤が激しい振動を繰り返しますが、このとき免震住宅でもこの地盤振動の一部がスライド装置を介して建物にも伝わってしまいます。
原因は、すべり免震では金属板の摩擦力、転がり免震もベアリングの摩擦抵抗力です。こうして地盤の水平振動が建物に伝わると、建物はその重さによる慣性力で動き出し水平振動をはじめてしまいます。場合によってはスライド装置から外れる危険も生じます。
そこで考えられたのが、建物の水平振動をコントロールして建物と地盤の位置関係を適切に保つ「連結装置」としての機能を付け加えることでした。住宅の免震では、スライド装置の形式により次のような方法がとられています。
1.すべり免震
スライド装置
連結装置
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すべり面の摩擦抵抗力と積層ゴムの復元力を利用して、建物の揺れを調整する
2.転がり免震
スライド装置
連結装置
シリンダー型ダンパーの抵抗力と積層ゴムの復元力を利用して、建物の揺れを調整する
3.球面滑り免震
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おわん型のすべり板とすべり球の摩擦力と球面に生じる求心力を利用して、建物の揺れを調整する

(原則として別途連結装置を必要としません)
また、建物には台風や物の衝突など様々な水平力が作用しますから、「連結装置」は一定の水平力では建物が動かないようにする役割も果します。

■「絶縁と連結」を共に解決する
以上のように「スライド装置」「連結装置」は、建物に伝わる地盤振動をカットする役割と、建物が揺れ始めるとその摺動部分で建物の振動にブレーキをかけて減衰させる二つの役割を果たします。
この「絶縁と連結」という対立する機能を、力学の仕組みとして解明したのが振動を扱う学問でした。そこでは「スライド装置」と「連結装置」の組合せを一体の「振動装置」として扱い、その「振動周期」と「減衰性能」をうまく組み合せることによって、建物と地盤が絶縁した状態にすることを実現しました。
例えば、「振動装置」の振動周期を地盤の振動周期より長くする事により建物と地盤の共振を回避し、更に建物に発生する振動を減衰させることで建物はゆっくりと揺れて、地盤の激しい振動とはまったく違う揺れ方にすることができました。
このようにして地盤から建物に伝わる地盤振動を適切に調整することができる「振動装置」即ち「免震装置」の開発は、耐震設計技術の画期を成すものとなりました。

■免震装置の最適設計
免震装置の主要な性能は、その「振動周期特性」「減衰性能」であることは先にも述べましたが、一つ一つの免震装置に必要とされる性能は、想定する「地震波の性質」、「敷地地盤の振動特性」、「建物の固有周期」など主に3つの要素によって大きく変わります。
そこで、免震装置の設計に当たっては、これらの要素を注意深く検討し設計条件を整えた上で、多種多様な免震部材の中から最適の組み合わせを計画しその効果を検証することになります。
例えば、震度5以下、震度6程度、震度7以上の地震の時に建物の水平変位は何センチ位に納まるか、建物にどれ位の地震力が伝わるか、そのとき免震装置はどういう状態になるか等を確認し、目標とする性能に至るまで試行計算を繰り返します。
すべり免震では摩擦係数を、シリンダー型ダンパーではその抵抗力を少し変えるだけで建物の水平変位量や、建物に生じる水平ねじれ現象がガラッと変わります。柱がたくさんある木造住宅の場合は、建物重量がどの柱を通じてどちらの免震装置へ集まるのか、そうした検討がとても重要となります。
想定する地震動の強さは法律で定められた強度、もしくは最も近い距離にある活断層が動いた場合を想定して決めることになります。また地震動の特性や地盤の揺れ方は、敷地周辺の過去の地震被害を参考にしながら敷地の地層構成から読み取ることができます。従って、免震建物を設計する場合は慎重な地盤調査が必要となります。
こうした設計作業によって、「テレビが数メートル飛ぶような大地震のとき、免震住宅では食卓のワイングラスも倒れない」と表現される免震住宅の性能を確保することができます。
また、免震を採用する場合の建築費用の増加は、「乗用車1台分」とよくいわれますが、必要な機能を確保しながらコストを下げることも最適設計の大切な要素です。

■免震構法を多くの人々に
岳友であるK氏の修士論文は、「柔らかい地盤上に立つ鉄筋コンクリート造建築物の挙動」という内容であったかと思いますが、この柔らかい地盤を更にやわらかくすれば現在の免震装置につながる事に気付きます。1960年代、建築の世界に免震という言葉が現れるかなり前のことです。
その後、K氏は我が国のすべり免震工法の実用化に中心的な役割を果たしましたが、こうした永い研究活動と実験による検証の積み重ねの上に今日のすぐれた免震構法があります。誠にありがたいことです。この20世紀耐震工学の大きな成果をなるべく多くの人々が享受し、安心安全のくらしの輪を更に広げたいものです。
古くより地震大国での住まいづくりは地震災害とのたたかいでしたが、大工棟梁たちはさまざまな工夫と技術を伝承して、高温多湿の風土にふさわしい開放的で風通しの良い住まいの造り方を遺してくれました。免震構法はこうした住まい造りを、更に高い安全性のうえに実現します。住まいこそ免震でつくり、安心してお暮らしください。地震で壊れない住まいは、孫子の代へ永く住まい継がれることでしょう。

長い文章をお読み頂き誠にありがとうございます。

摺木 勉


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